一緒にいる時間

一人っ子で両親は共働きだったので、全員で過ごす時間が少なかったんです。その分、ずっと一緒にいられる家族旅行が好きでした。なかでも宿にいる時間、同じ空間にいられるのが好きだったんだと思います。ホテルや旅館の方にニコニコ出迎えてもらったり、丁寧におもてなししてもらったことを、今でもよくよく覚えているんです。

仕事について考えるようになったとき、私も素敵な時間を一緒につくる仕事ができたらいいなと思ったんです。和らくに来て、梁の出ている建物の感じとか全体の雰囲気から、こだわりがちゃんとあることが感じられて。この旅館は好きになれるし、ここでお客さまをご案内したいと思いました。経験や知識はなかったけど、体育大学でボートをやっていたので、体力には自信があったんです。

感覚を研ぎ澄ます

フロントから始まって、仲居、掃除などの裏方の仕事を覚えてきました。マニュアルはないので、常に自分がお客さまだったらどう感じるかを意識しながら動いていきます。私、どこの席のお客さまが箸を落としたのか音だけで確認して、すぐに替えをお持ちするのが得意なんです。もちろん聞こうと思っていないと、いざというときに気づけません。常に意識を研ぎ澄まして、お客さまの様子がわかるようにしています。

とはいえ、まだまだできないことも多くて。正直、どう頑張っていいかわからなくなってしまうこともあります。それでも続けようと思うのは、和らくと、和らくに来てくださるお客さまが好きだから。旅館を喜んでいただけたり、私の名前を覚えてもらえたときには、やっぱり嬉しいですよね。まだぼやっとしていますが、いつか自分でも宿をやってみたいんです。

身近にあったものがより見える

ちょうど人が入れ替わるタイミングに入社したので、和らくには直属の先輩にあたる人がいなくて。研修で黒川塾に通うようになってから、お互いに悩んでいることを話せたり、休みの日に出かける仲間ができました。

みんなで黒川の歴史や、今この地域で取り組んでいることを学んでいます。中でも入湯手形について知るフィールドワークは勉強になりました。手形づくりを体験してみたら、すごく大変で。木を育てるところから始まって、茹でて、皮を剥いで、削って、乾燥させて。これを35年、ほぼ1人でやっている方がいるということもずっと知らなかったんです。何気なく受け取っていた手形だったけど、見え方が変わったし、お客さまに詳しく話すと喜んでいただけるんですよ。伝えられることが増えていくのは、私にとっても、自信みたいなものにつながっているような感じがします。

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皆様にお会いできることを、心より楽しみにしています。