黒川温泉では、次世代リーダー育成プログラム『黒川塾』をはじめ、様々な研修の企画・実施を通して、黒川温泉で働くスタッフの方々に豊かなキャリアを築いてもらいたいと考えています。

黒川塾の様子

麻友さん

いつもこんな風に、日頃のできごとを話したり愚痴をこぼしつつ、本題に入っていく感じだよね。

祐子さん

そうそう。黒川塾も、こうやって話すなかから始まったはず。

麻友さん

それまでも単発のスタッフ研修はやってはいたものの、各旅館でリーダーが育たないっていうのが課題として見えてきていて。人材育成のプロである前田氏に相談して、黒川塾の形ができていったのが4年くらい前だよね。

千枝さん

昔、接客部門とフロント部門で競い合う大会みたいなのがあったの覚えてる?あれでモチベーションを保っていた子もけっこういたみたいで。1つの旅館だけだと井の中の蛙になりがちだけど、周りの様子を知ったり目標ができるという意味では、すごくいい機会だったんだと思う。

祐子さん

黒川塾は旅館も部門も年代もごちゃまぜで、垣根を超えて集まっているというのが、これまでにない仕組みだよね。

後藤 麻友さん(旅館 山河:若女将)

麻友さん

もともと慢性的に、人材の採用と育成、それから定着という課題があって。各々の旅館で取り組んでいても難しいから、黒川温泉全体でまとまって発信していきましょうってことになったんだよね。その一環で、黒川塾をスタートして。

祐子さん

普通だったら、旅館同士で交流すると人を引き抜かれちゃうんじゃないかって話が出てきたりするでしょう。それをみんなでやろうって言える黒川ってすごいと思う。

麻友さん

黒川温泉全体が続いていかないと、結果として、自分の旅館も続けることができない。黒川の歴史を見ても、誰かが功績を上げるのではなくみんなでやりましょうって、いろんなことに取り組んできたんだよね。

実沙さん

黒川塾でよかったのは、スキルを詰め込むんじゃなくて、地域のことを学んだり関わる人が増える機会をつくったことだと思うんです。地域について考えて、この土地で働く意味みたいなものをちゃんと自分のなかで構築できるのは、すごくいいなって。

麻友さん

うちの旅館から参加したスタッフが「この地域にしかない良さを出していこう」って言い始めていて。それって、ほかの旅館のメンバーと話したことが刺激になってるんだよね。

実沙さん

それ、すごくいいですね。

黒川塾の様子

千枝さん

黒川塾をやっていて一番感動するのは、やっぱり、年度の最後にあるマイプロジェクトの発表かな。

祐子さん

最初は嫌々参加していた人が、回を重ねるごとに自分の悩みを話してくれるようになったり、自分のやりたいことを口にするようになったり。旅館のためだったりお客さまのためだったり、他者の困りごとを解決しよう考えて形にしていく姿には、毎回うるっときちゃうよね。

千枝さん

ほんと、自分の子どもが成長していくのを見守るのと同じ感覚になっちゃって。1年のあいだに、目に見えて活き活きしてくるでしょう。社会に対して自分はなにができるのか考えていると、段々とふだんの仕事も変わってくるんだよね。最初はただ働いてるだけの感覚だったのが、自分の意志が出てくるというか。

麻友さん

旅館って普段はルーティンワークに追われがちで。なかなか変化の機会を見つけにくいのが悩みだったりするよね。

祐子さん

参加した本人の変化って、旅館に戻ってもほかのスタッフに伝わっていく。うちのスタッフは、一緒に働くおばちゃんたちがなんだか前より協力的になったって話していて。周りを巻き込む力を身につけるって、すごく大事なことだよね。

左・漣 祐子さん(ふもと旅館・こうの湯:若女将)/右・穴井実沙さん(お宿 のし湯:若女将)

麻友さん

就職して黒川で暮らしていても、なかなか外のコミュニティと関わる機会がなくて。黒川塾を通して横のつながりができるのは、働く動機にもつながっていると思うんだよね。

実沙さん

もちろん長く働いてほしいけど、若い人って、ずっとここにいるのは難しいと思うんです。私自身もそうだったように、人生でいろんな体験をしたいじゃないですか。その人の次のステップを応援したいけれど、日々旅館で働くことで、なにか次に活かせる学びがあったんだろうかって、心配になることがあります。

麻友さん

もちろん普段の仕事でも身につけてくれているものはあると思うけど、それに加えて、黒川塾を通じて自分のプロジェクトを立ち上げて実行するって、きっとその人の力になっていて。身につけた力を次の場所で活かしてもらいたいし、なかには、また黒川に戻ってきてくれる人が出てくるとうれしいよね。

千枝さん

私は、うちを辞めた後でも遊びに来れる関係っていいなって思っていて。家族が増えましたって会いに来てくれたりすると、それだけでももう幸せっていうかね。

二子石 千枝さん(里の湯 和らく:若女将)

千枝さん

旅館で一緒に働いて、私だけではできないことをやってもらっているから。従業員っていうより、やっぱり家族みたいな感じがあって。困っていたらどうにかしてあげたいし、頑張っていることがあるなら応援したい。給料払ってるんだから、っていうことではなくてね。

祐子さん

私たちの「女将」っていう立場もあるんでしょうね。経営に関わりつつ現場に出ていて、働いてるスタッフたちと距離も近くなりやすい。

実沙さん

旅館経営ってすごく儲かるわけでもないし、一緒に働く人とその家族を守るっていう使命でしかやれないですよね。みんなに幸せになってほしい。もうそれしかないっていうか。

麻友さん

幸せという意味でいうと、日々の仕事はもちろんだけど、黒川塾に参加することで、自分がどうありたいか、そのために何をすればいいのかを考える時間にしてもらえたらいいなと思っていて。自分にとっての幸せってどういう状態なのかわかると、時間の使い方が変わってくると思うんですよ。

実沙さん

本当の意味で自分と向き合うって、案外1人だけではできなかったりするんですよね。人に話を聞いてもらったり、自分の意見を伝える場があって気がつくことってすごく多くて。

祐子さん

黒川塾を3年続けてきて、この取り組みを辞めようっていう声は出てこない。少しずつでもいい動きにつながっているし、今後もやってみたいことがたくさんあって。旅館って、結局は「人」でしかないから。黒川温泉ならではの、いい循環をつくっていきたいよね。地道ではあるけれど、引き続き楽しみながらがんばっていきましょう。

黒川温泉の研修事業(キャリアサポート)は、このような想いによって支えられています。
楽しみながら学んでもらえる研修作りを心がけていますが、時には厳しく指摘をされることもあるかもしれません(笑)
ですが、一同、黒川温泉で働く皆さんの成長や日々が充実することを心から願っています。
安心して黒川温泉に働きに来てくださいね。

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皆様にお会いできることを、心より楽しみにしています。